2021.10.31

ポートフォリオキャリアという新しい考え方|副業時代は古い?

副業を始める人や副業を解禁する企業が増える近年ですが、「ポートフォリオキャリア」という新しい働き方が注目されています。これからのAI時代を生きるミレニアル世代には必須になっていくかもしれない!?ポートフォリオキャリアについて紹介します。

新しい時代の「ポートフォリオキャリア」とは?


令和2年版厚生労働白書によると2019年時点で日本の非正規雇用労働者の割合は38.3%にのぼり、その中で本当なら正規雇用で働きたいのに非正規で働く人(不本意非正規雇用労働者)も11.6%存在しているそうです。

出典:厚生労働省|令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-(外部リンク)

加えてコロナ禍による雇用情勢の悪化やAIやロボットと働く未来もすぐそこまで来ており、私たちをとりまく労働環境はますます複雑に……。

現在正社員で働いている人も「自分は今の職場で働き続けられるの?」「収入源が一つしかないのは、いざという時に不安……」と考える人も多いのではないでしょうか。

そんな中、これからの時代の新しい働き方としてポートフォリオキャリアが注目されています。

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複数の肩書きを持つキャリア形成


ポートフォリオキャリア(Portfolio career)とは、一つではなく複数の仕事を掛け持つ働き方のこと。
その働き方を実践する人のことをポートフォリオワーカーと言います。

分かりやすく言えば、複数の名刺を持つ働き方といったところでしょうか。
たとえば、大学教授をしながらコンサルタントとして起業している人、企業の人事担当として働きながらコミュニティマネージャーとして起業している人などがいます。

社会人として一つの仕事や同一職種にこだわることなく、複数の専門スキルを活かした自由な働き方です。

副業とは違う考え方


一見すると「副業と同じでは?」とも思うポートフォリオキャリアですが、副業は本業の空いた時間を使って働くサブの仕事であるのに対し、ポートフォリオキャリアでは両立する仕事のどれもが本業という違いがあります。

現在の日本で、一般企業に勤めながらポートフォリオキャリアを歩むには、企業側の理解度や就業規則・待遇面でまだまだ難しい側面があることは事実です。

一方、海外ではポートフォリオワーカーが組合をつくり、一般企業と同等の福利厚生を得られているケースもあります。

ポートフォリオキャリアが生まれた背景と理由


「ポートフォリオ」とは元々金融業界で使われていた言葉で、「金融商品の組み合わせ」の意味を持ちます。

ポートフォリオキャリアという概念が生れた背景の一つには、人生100年時代とも言われる現代において、先にお話したような労働環境の複雑化への危機感があります。

それと同時に、人々の働くことへの価値観も多様化しました。
デトロイト トーマツ グループによる「ミレニアル・Z世代年次調査2021」では、日本で働くミレニアル世代の24%が現在の勤務先から2年以内に離職したいと回答しています。

出典:デトロイト トーマツ グループ|ミレニアル・Z世代年次調査2021(外部リンク)

COVID-19拡大前の2019年の49%という結果に比べると、コロナ禍での経済情勢の不安定化もあって半減してはいますが、それでもミレニアル世代の約4人に1人は、転職意向があり、組織に対する帰属意識は低下していることがわかりますよね。

「どこ(どの会社)で働くか」よりは、「どう働きたいか」「仕事を通してどんな自分になりたいか」という価値観に重きを置く傾向が顕著になってきています。

そんな中、より豊かな生き方を実現するための手段として、ミレニアル世代を中心にポートフォリオキャリアの考え方が浸透しはじめたのです。

ポートフォリオキャリアが浸透しはじめた理由について、もう少し具体的に見ていきましょう。

収入源を複数化できる


収入源が一つしかなければ、倒産やリストラ、減給などの問題が起こった時に生活の根幹が揺らぐ事態にもなりかねません。

先程の「ミレニアル・Z世代年次調査2021」では、日本のミレニアル世代の54%が「自国の経済は悪化する」と予測しており、経済や就業への不安を抱いている人が多くいます。

ポートフォリオキャリアを実践することで、収入源が複数化すればリスク分散につながり、多少のトラブルにも動じない収入基盤を作ることが可能です。

キャリアが広がる


ポートフォリオキャリアは、「自分が本当にやりたいこと」「実現したいこと」「世に伝えていきたいこと」を追及(模索)できる自己実現の手段でもあります。

そのため、一つのキャリアにこだわることなく、とにかく「やってみる精神」で行動を起こし、不都合があれば軌道修正しながら複数のキャリアを築いていく人が多くいます。

結果として、キャリアが複数分野、多岐にわたって広がっていくのもポートフォリオキャリアの魅力です。

収入を増やす目的


副業の場合にも言えることですが、「より高収入を得たい」という思いからポートフォリオキャリアを実践する人も増えています。
確かに複数の仕事を掛け持ちすれば、本業一本で働く場合に比べて収入の増加を期待できます。

ただし、ポートフォリオキャリアを実践すれば誰でも必ず収入が増えるとは限らず、収入がある程度軌道に乗って安定化するまでは、時間がかかる場合も多いことを心にとめておきましょう。

また、会社勤めをしながらポートフォリオキャリアを歩む場合は別ですが、より自由度の高いフリーランスとして独立する場合は、自分で国民年金と健康保険に加入する必要があります。

国民健康保険は所得が上がるほど保険料がアップしていくため、会社の健康保険組合に加入していたときよりも負担が増すケースもあることに注意が必要です。

ポートフォリオキャリアのメリット・デメリット


ポートフォリオキャリアを選択する場合、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
メリット・デメリットの一例を紹介します。

メリット:人材としての希少性が高まる


複数のキャリアを掛け持ちすることは、一つのキャリアにとどまらない独自の視点やアイディア、適応力を生み出します。

単独キャリアの中でトップを極めることは簡単ではありません。
ですが、ポートフォリオキャリアによるスキルの掛け合わせはその人にしかできない仕事を実現し、人材としての希少性を格段にアップさせます。

さらに、こうした複合的スキルはAIには代替が難しいので、厳しさを増す新時代の中でも生き残れる人材となることでしょう。

デメリット:休みが減る


とはいえ、誰しも1日24時間365日しかない有限な時間の中で、ポートフォリオキャリアを歩むことはたやすいことではありません。
複数の仕事を掛け持ちするので、当然仕事量は増えることがほとんどでしょう。

仕事とプライベートの境界がなく、寝ている時間以外はすべて仕事のような働き方(ワークアズライフ)になる人も多くいます。
仕事をする時間や相手を臨機応変にコントロールする自己管理能力が重要です。

自分がポートフォリオキャリアに向いてるか考えてみる


ここまでポートフォリオキャリアの働き方を紹介してきましたが、誰もがポートフォリオキャリアという働き方がベストとは限らないため、「自分はポートフォリオキャリアに向いているのか?」を見極めることも大切です。

そこで、ポートフォリオキャリアに向いている人がもつ傾向を三つ紹介します。

やりたいことが複数あり、将来のキャリアを決めきれない


新卒で就職先を決める際、本当はやりたいことが複数あるのに、自身の中で取捨選択を迫られやむを得ず一つに絞った経験をもつ人もいるのではないでしょうか。

従来の本業一本というワークスタイルの場合だと、上記のような葛藤が生じますが、ポートフォリオキャリアを選択すれば、自分のやりたいことを諦めず挑戦することができます。

また人によっては、社会で経験を積む中で自分が本当にしたいこと、どうなりたいかを見極めて行きたいということもあるでしょう。
このような思いをもつ人にとってポートフォリオキャリアは、自身の可能性を広げてくれる働き方と言えます。

頭の中にたくさんのアイデアがある


日々の仕事において与えられたことをこなすだけではなく、常に新しいアイデアに溢れ、それを試さずにはいられない人もポートフォリオキャリアが向いています。

一見すると今の仕事には関係のなさそうなアイデアも、他の仕事には役立つということがたくさんあるからです。

飽きっぽく、色々なものに興味が移る


「石の上にも三年」ということわざにも代表されるように、日本では忍耐強さが美徳とされる文化があります。

一方で飽きっぽく、興味の対象がコロコロ変化することは、あまり好ましくないと感じている人もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

興味の対象が変化しやすいことは、言い換えれば好奇心旺盛で変化を恐れない、変化に適応する力が強いことを意味し、ポートフォリオキャリアを歩む上では欠かすことのできない適性の一つです。

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ポートフォリオキャリアで未来を見据える


「VUCA(ブーカ)」の時代とも言われる現代。VUCAは変動性・不確実性・複雑性・曖昧性を意味する英単語の頭文字を並べた造語で、私たちを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、未来が予測困難であることを示します。

このような社会の中では、私たちも働き方・生き方を見直すべき時が来ているのかもしれません。
新しい時代の働き方の一つとして、ポートフォリオキャリアを検討してみるのもよいのではないでしょうか。

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kirariraindrop(ライター)
kirariraindrop

2018年よりライター・編集者として活動。元看護師。きれいめファッション・文房具・おいしいパンが好物。読んでくれる人に小さなhappyを届けられるよう修行中。

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