体調不良は退職の理由になる!
体調がずっと優れなくて働くのが辛い、でも体調不良で退職するのは周りにも迷惑がかかるし気が引ける、それに体調不良という理由だけでは退職させて貰えないのでは?......そう考えている人もいるかもしれません。
結論から言うと、体調不良は退職の理由になります。
法律でもしっかりと認められた退職の理由の1つですから、引け目を感じる必要もありません。
まずは体調不良が退職の理由として認められる根拠を確認していきましょう。
退職は労働者の権利
まず第一に、退職は労働者の権利の1つです。
雇用期間が定められていない正社員であれば、どんな理由でも退職できます。
法律上では「退職する14日前までに会社に退職したい旨の通知」をすれば、退職できます。
雇用期間に定めのある契約社員だと少し話は違いますが、それでも退職に関して一定の権利が認められています。
契約社員の場合、雇用期間中は一方的な退職はできません。
一方的に退職してしまうと、最悪の場合「債務不履行」として損害賠償が発生してしまう場合があります。
しかしそれも「やむを得ない理由」があれば話は別です。
体調不良はやむを得ない理由に該当すると考えられるので、正社員と同じく体調不良を理由に雇用期間中でも退職することができます。
体調不良は即日退職も可能
退職は労働者の権利ですが、その退職の理由が「体調不良」であれば即日の退職も可能です。
先ほども書きましたが、法律上は退職する14日前までに会社に退職の旨を伝える必要があります。
しかし「やむを得ない理由」があれば、即日離職も実は法律で認められているのです。
体調不良は「やむを得ない理由」にあたります。
もちろんなんの通知もなくいきなり辞めてしまうと会社も同僚も困ってしまうと思うので、できれば事前に退職の通知をするのがベターではあります。
ですが自分の心や体がおかしくなっているのであれば、それを守るのが優先です。
体調不良は退職の理由になること、体調不良は「やむを得ない理由」なので即時退職も可能であることは覚えておいて損はないでしょう。
業務が原因の体調不良なら労災にあたるケースも
業務が原因の体調不良なら労災にあたるケースもあります。
業務中の怪我はもちろん、異常な残業や会社でのストレスにより体調を壊したのであれば、会社に労働災害認定を求めることができます。
労働災害が認められるかどうかはケースバイケースですが、本当は退職したくないのに会社の労働環境のせいで続けられなくなったのであれば、労災の認定を求め保障を受けるのも1つの手です。
※労災の場合は、この記事が扱う「体調不良で退職する」のとはまた別の手続きなどが必要です。
体調不良で退職する際の流れ
ここからは体調不良で退職する場合の流れについてご説明します。
致し方のないこととはいえ、できれば最後までマナーを守り、気持ちよく退職したいものですね。
できれば1か月前までに退職の意を伝える
体調不良による退職は即時退職が可能です。
体調不良ではなくても、14日前までに退職の意志を伝えれば退職できます
ですがいきなり人員が減ってしまうと会社も困ってしまうものです。
できれば退職を希望する1か月前までには、退職の意志を伝えた方がいいでしょう。
退職後もいろいろな手続きなどで会社と連絡をとる必要がでてくる場合もあります。
できるだけ会社も自身も納得する形の退職を目指したいものです。
※もちろん体調不良で自分の心身が今にもダメになりそうなときなど、緊急性があるのであればすぐに退職してください。
14日前の通知と言わず、自分を守るためにも即時退職を会社に伝えて離職したほうがいいです。
まずは直属の上司に相談する
体調不良での退職を希望する時、まずは直属の上司に相談するようにしましょう。
最初はメールで相談しても良いと思いますが、自分の体調の事を細かく伝える必要があるので、どこかで時間をつくり顔をあわせて話し合うようにしましょう。
同僚には「体調が悪い」ことは伝えても良いですが、退職の相談はまずは上司にした方がいいです。
あなたの退職を受理するか判断に関わってくるのは上司であり、上司が知る前に周りがそのことを知っていると良い印象を与えません。
事実を伝える
体調不良での退職を上司に相談する際、必ず事実を伝えるようにしてください。
体調不良をいつから感じていたのか、どのような体調不良をかかえているのかをしっかり訴え、体調不良の深刻さが伝わる様に工夫しましょう。
その上で、業務を続けていける状態にないことを強く訴えてください。
体調不良で退職を希望する場合、会社は休業をすすめてくるかもしれません。
自分自身が体調が回復する見込みがあって、回復後もまたその会社に勤めたいのであれば話は別ですが、そうでないなら断りましょう。
体調回復の目途がたたないことなどを理由にすればOKです。
診断書を用意するのも手
体調不良を理由に退職する際、医師の診断書は必要ありません。
求められても出す必要はありません。
雇用期間の定めのない正社員は、自分の意志で14日前までに退職を通知することで退職できる権利があるからです。
ただし診断書があると、会社側も納得しやすいのは事実です。
医師によって書かれた診断書は、体調不良の強い証拠になるからです。
また、発症した時期や原因、具体的な症状などが書かれた診断書があると、説明もスムーズにできます。
場合によっては診断書を用意するのも手でしょう。
また契約社員など雇用期間が限定されている働き方の人が、体調不良を理由に退職を希望するのであれば、医師の診断書は強い味方になってくれるはずです。
先ほども書きましたが、契約社員は「やむを得ない理由」がある場合をのぞき、雇用期間中の一方的な退職は認められていません。
もともと雇用期間中に会社の同意が得られなければ退職が認められていない契約社員は、「やむを得ない理由=体調不良」が明確にならないと辞めづらいものです。
診断書は必須ではありませんが、診断書をだすことで「やむを得ない理由」が明確に会社に伝わります。
体調不良で退職するとき理不尽な引き止めにあったら
何度も書いていますが、退職することは正社員の権利です。
体調不良が理由の退職は、正社員でも契約社員でも「やむを得ない理由」として退職が認められています。
ですが中には退職を認めてくれず、理不尽なひき止めにあうこともあります。
ここからは、理不尽なひき止めのケースとその対処法についてです。
体調不良で退職◎理不尽なひき止めのケース
理不尽なひき止めのケースとしては、以下のようなものがあります。
そのどれもが法律的にNGです。
ひき止めのケースと、なぜそれが違法なのか解説します。
退職届を受理してくれない
次の後任が見つかるまで待ってほしいと、退職届を受理してくれないのはよくあるケースです。
ですが退職は労働者の権利です。
正社員であれば14日前までに通知すればどんな理由であっても退職できますし、体調不良などの「やむを得ない理由」であれば即日退職できます。
会社が退職届を受理しないのは在職強要と考えられ、労働基準法に定められた「強制労働の禁止」に該当する違法行為と考えられます。
退職金給料を払わないなどの脅し
悪質なケースでは、「せめて1か月前に通知しないと、退職金を払わない」「次の後任が見つかるまで働いてくれないと、給料は払わない」などと言われることがあります。
会社が実際に給料や退職金を払わなかったり、これらの脅しをしてくるのは明らかな違法行為です。
体調不良などの「やむを得ない理由」であれば、即日退職であっても退職金や給与は受け取れます。
有給休暇を消化させてくれない
退職前に有給休暇を消化することは、体調不良が理由であっても可能です。
有給休暇は労働者の権利の1つですから、しっかり消化して退職することができます。
会社が有給休暇の消化を認めないのは、体調不良が理由の退職であっても間違っています。
離職票を発行してくれない
体調不良で退職した場合、すぐに離職票が必要になるケースはほとんどないと思います。
ですが体調が回復し次の仕事を見つけるためにハローワークを利用したいと思ったときなど、離職票を求められることがあります。
離職票の発行は企業側の義務です。
企業は従業員の退職後10日以内に離職票を発行しなくてはなりませんし、即日退職などを理由に離職票を発行しないというのは間違っています。
懲戒解雇にされそう
とても悪質なケースですが、中には懲戒解雇にすると脅してくるケースもあります。
「即日退職するせいで会社が損害を被った。懲戒解雇にする」
「14日前までに退職通知しないのは違反だから、懲戒解雇にする」
何度も何度も書いていますが、体調不良はやむを得ない理由として即日退職することができます。
体調不良による即日退職を理由に懲戒解雇にすることはできません。
理不尽なひき止めなどにあったら◎労働基準局に訴える
上記理不尽な引き止めなどにあったら、どうすればよいのでしょうか。
体調不良であると明確に伝えても、あるいは診断書などを提出しても上記のような理不尽がおこったら、労働基準局に相談しましょう。
各都市に相談窓口がありますし、電話で相談することも可能です。
労働基準局に相談し会社側の間違いが認められれば、労働基準局から会社への指導をしてもらうなどの支援をうけることができます。
退職代行を利用する手も
体調不良といっても、その程度はさまざまです。
中には会社に行って退職を伝えるのも辛い人もいると思います。
職場の状態によっては、退職を伝える電話をすることすら恐ろしいと感じる場合もあるでしょう。
そんなときに頼りになるのが退職代行サービスです。
会社と全く連絡をとらずに退職をすることができます。
もちろん外部にサービスを依頼するわけですから費用はかかりますが、第3者にお願いすることにより感情的にならずスムーズに退職できます。
体調不良で退職するときに使える支援制度
体調不良で退職した場合、体調が回復するまで求職活動をするのは難しいことが多いです。
そんな時心配になるのがお金のこと。
退職後も安心して生活できるように、公的支援制度を積極的に使っていきましょう。
退職ではなく休業して「傷病手当金」を受け取る
体調不良になって働けなくなったとき会社を続けたい意志があるのであれば、すぐに退職するのではなく「休業」という選択肢もあります。
休業を選択することで「傷病手当金」を申請することができるのです。
「傷病手当金」とは病気や怪我で会社を休み会社から十分な報酬が受けられない時に、その人の生活を保証するために設けられている制度です。
傷病手当金を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 仕事ができない状態であること
- 病気や怪我で、連続して3日間会社を休んだこと
- 仕事とは関係ない病気や怪我で仕事に就けないこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
このうち3についてですが、仕事が原因で病気や怪我になった場合は「労働災害」として、今回の「体調不良による退職」とは別の手続きが必要になります。
また4についてですが、給与の支払いがあっても傷病手当よりも額が少ない場合は、その差額分の支給をうけることができます。
傷病手当金を受けられるのは最長1年6か月で、それ以降は無支給になります。
もしも会社を続けたいと思っているのであれば、ぜひこの制度を利用しましょう。
また会社によっては、別途休職中の保障を設定しているところもあります。
退職・休職する前に確認しておいてください。
退職したら「失業手当」を受け取る
体調不良による退職後、心身が回復して求職活動をしているのにも関わらず仕事が見つからない場合、失業手当をうけることができます。
失業手当を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 体調不良から回復し、仕事に就ける健康状態であること
- 求職活動を積極的におこなっている・仕事に就きたいという意志があること
- 離職の日以前1年間に、雇用険加入期間が通算して6カ月以上あること
3についてですが、自己都合退職であれば雇用険加入期間は通算して12カ月以上必要です。
ですが、体調不良などやむを得ない理由が合った場合は6カ月加入していれば失業手当が受けられます。
体調不良で退職したあとの就職活動について
体調不良で退職したことで、心配になるのがその後の就職活動です。
体調不良ということで、企業に悪印象を持たれないか不安になりますよね。
体調不良で退職した場合、体調回復後の就職活動でおさえておきたいことが3つあります。
- 体調不良から完全に回復したことを企業に伝える
- 体調不良になった原因が存在する企業を選ばない
- 前職についてネガティブな発言をしない
まず1ですが、体調不良で退職した人を見て企業がもっとも心配することが「また体調不良を理由に退職しないだろうか」ということ。
せっかく雇用して時間やエネルギーを使い仕事を教えたのにもかかわらず、退職されてしまっては企業にとって損失です。
体調が回復していることを企業にしっかり伝えましょう。
次に2についてです。
例えば前職できつい営業ノルマのせいで鬱になったのであれば、再就職先にきつい営業ノルマのある企業を選んでしまうと、前職と同じことになってしまいます。
正当な理由で退職したのであれば、就職活動でそこまでマイナスな印象になることはありませんが、体調不良による退職が続くのは決して良い印象を与えません。
最後に3についてです。
体調不良で退職した場合、転職理由がネガティブなものになりがちです。
ネガティブな発言は企業に良い印象を与えませからやめましょう。
営業ノルマで鬱っぽくなり前職をやめたからといって「御社は営業ノルマが低そうなので......」というのは、やる気が感じられません。
本音は前職のネガティブな部分が無さそうだからその企業を希望したのかもしれませんが、あくまで希望する企業のポジティブな面に目をむけ、そこを志望動機にしてください。
例えば「御社の製品を拝見し、御社の革新性と将来性を感じました。そんな御社で自分も成長できればと考え御社を希望いたしました」などです。
面接官に熱意が伝わるような理由を志望動機・転職理由にしたいものですね。
体調不良による退職であることは正直に言うべきですが、その企業に転職を希望した理由はポジティブなものにしたほうが上手くいきます。
体調不良で退職した筆者が伝えたいこと
ここからは、筆者個人の体験をお伝えします。
体調不良で退職しようか考えている人の助けに少しでもなれば幸いです。
私は大学卒業後、新卒総合職で入社した会社を2年ちょっとで退職しています。
その理由は体調不良です。
残業につぐ残業、セクハラにつぐセクハラ。
3か月ずっと休日出勤になり、一度も休みの日がなかったこともあります。
それでも上司からの「会社が認めないかぎり退職できない」という言葉を信じてしまっていましたし、毎日死にたいとさえ思いながら仕事をしていました。
結果として1年9か月たったころ生理がとまり、ストレスによる男性ホルモン増加の影響で髭がはえました。
会社のビルの前に来るたびに恐怖で体が震え、動悸や息切れもおこりました。
そんなことが続いたある日、あまりに様子がおかしい私に同じ会社で事務職をしていた女性が言ってくれたのです。
「もう辞めな、死んじゃうよ」と。
その時ストンと何かが私の心に落ちてきたのです。
このままだと私は死ぬんだな、辞めてもいいんだなと初めて理解したのです。
そして退職の意を上司に伝え、色々ひき止めなどはありましたが「自己都合」で会社を退職しました。
仮に当時の自分がこの記事に書かれている知識を持っていたなら、「体調不良」を理由に、体調がここまで悪化する前に退職していたと思います。
体調不良で退職後、体調が戻るのにとても時間がかかりました。
体調不良を感じ始めた段階で無理をせず退職していたら、おそらくもっと早く体調が戻っていたと思います。
体調が戻り就職活動を始められるようになるまで、自分はもうどこでも働けないのではないかと不安でした。
でも結果からいうと無事就職もできましたし、体調も戻り毎日それなりに幸せに暮らせています。
もしも、この記事を読んでる女性で体調不良を感じているけれど退職するのを迷っている人がいたら、「貴方の心身の健康は仕事より大事」とアドバイスしたいです。
退職は労働者の権利の1つですし、体調不良で退職することは何も恥ずかしいことではありません。
心身がおかしくなる前に、休業するなり退職するなりで自分を守ってください。
【まとめ】体調不良で退職するには
体調がすぐれないまま仕事を続けるのは辛いものです。
そんな時は体を壊す前に、体調不良を理由に退職するのも1つの手です。
できれば同僚や会社の負担にならないように早めの退職通知をするのがベターですが、そうできない状況の場合もあると思います。
引け目を感じることなく「退職」という手段を使って、自分を守ってください。