2021.09.21

フリーランスと個人事業主の違い?メリット・デメリットやお金の話

ここ数年、ニュースなどで「フリーランス」という言葉を耳にすることが多くなってきました。 「フリーランス」と「個人事業主」は一体何が違うのでしょうか? 今回は、フリーランスと個人事業主の違いについてご説明いたします。

フリーランスと個人事業主はどう違う?


「フリーランスと個人事業主って、よく似ているけれどイコールではないの?」そんな疑問にお答えします。

フリーランスとは、特定の企業や組織に雇用されることなく、案件ごとにお仕事を受注して働くという「働き方」のことです。
また、このような働き方をしている人自体を指す場合もあります。

プログラマーやデザイナー、ライター、アナウンサーなど、スキルを活かして自分の裁量で働くことができます。
会社に雇われている人であっても、副業で単発の仕事を請け負っている場合、この副業のほうはフリーランスとして働いていると言えます。

そして個人事業主は、「税務上の区分」です。
継続・反復して事業による収入を得る場合は、原則として税務署に「開業届」を提出する必要があります。

この開業届を出した人が「個人事業主」として分類されます。
つまり、フリーランスという働き方をする人が開業届を出せば「フリーランスで個人事業主」になり、フリーランスでなくなるわけではありません。

逆に、個人事業主であっても店舗経営者などはフリーランスとは呼びませんので、個人事業主全員がフリーランスというわけでもないということになります。

開業届を出したら個人事業主になる


前述のとおり、継続して事業収入を得ていくのであれば例え副業であっても税務署に開業届を提出する義務があります。
開業届を出すと個人事業主になりますが、個人事業主にはどのような特徴があり、どのような手続きが必要なのでしょうか。

また、個人事業主になるにあたって、必要な資格や要件はあるのでしょうか。
こちらでは法人や自営業との違い、開業届の出し方などをご説明いたします。

フリーランスという言葉に比べて、何だか難しそうなイメージのある個人事業主という言葉ですが、手続き自体は難しくありませんので、ご安心くださいね。

法人との違い


独立を考えた時に、個人事業主でやっていくか法人を立ち上げるかで悩まれる方は多いと思います。
開業届を税務署に出すだけの個人事業主とは違い、法人設立には様々な手続きが必要です。

法務局への登記、各自治体への届け出、社会保険など、例え社長一人の会社でも多数の書類を準備しなければならず、印紙代などの費用も万単位でかかります。

次に住民税についてですが、個人事業主・法人どちらを選んでも申告内容に応じた住民税はかかります。
ただし、法人住民税の場合は仮に赤字だったとしても最低7万円程度の均等割が課税されます。

個人の住民税は所得や条件により非課税もあり得ますし、課税されてもわずかな税金で済む場合もありますので、大きな違いですね。

法人は、個人事業主よりも経費として計上できる科目が多く規模によっては節税のメリットもありますが、手続きが煩雑であり費用負担もあります。

これからお仕事を始めようとお考えの方は、まずは個人事業主として事業の様子を見られてから法人設立を検討されても遅くはないのではないでしょうか。

もちろん、最初から大きな事業計画を立てていて金融機関に融資の相談をしたい場合や、明確に法人格でやりたいことがある場合、その他法人設立したい理由がある場合はこの限りではありません。

ご自身のプランに合わせて選ばれることをオススメいたします。

個人事業主と自営業は違う?


「自営業」もよく聞く言葉ですが、個人事業主とはどう違うのでしょうか。
自営業は、勤務先からの給与収入ではなく自身で事業を営んで収入を得ている方を指します。

一般的な総称ですので、シーンによって個人事業主とイコールで語られたり、会社経営者の方が自営業を名乗られたりします。

社長の一人会社だけでなく、身内経営の会社の経営者の方も自営業と言われる場合があります。
個人事業主は法人格を持たない個人であると明確に定められていますので、この点が違うと言えます。

開業届の出し方


開業届は、開業から1ヵ月以内に提出することと定められています。
1ヵ月を過ぎても特にペナルティはありませんが、期限を守って出すようにしましょう。

開業届の様式の正式な名称は、「個人事業の開業・廃業等届出書」というものになります。
ネット上でダウンロードできますので、印刷して記入し、管轄の税務署に郵送か直接持参します。

郵送・窓口での提出どちらも規定の本人確認書類が必要になります。
プリンターが自宅にない方はコンビニプリントを利用しましょう。

また、この用紙は税務署に行けば直接貰うこともできます。
特別控除を受けられる・赤字を繰り越せるなどのメリットがある「青色申告」を行いたい方は、開業届とは別に「所得税の青色申告承認申請書」を開業から2ヵ月以内に提出する必要があります。

提出しない場合は、青色申告に比べて手間が少ない代わりにメリットも少ない「白色申告」に自動的に決まってしまいますので、青色申告を希望する方は忘れずに出しましょう。

なお、開業に関する申請書類を作成できるアプリやサービスもあります。
時短テクニックとして利用するのもありですね。

個人事業主になれない人とは?


個人事業主になれない人はいるのでしょうか。
個人事業主になるにあたって、手続き上の決まった要件はありません。

職業によっては、免許や資格取得の際に規定の要件を満たすことが必須な場合がありますが、開業届については書類さえ準備すればどのような方でも税務署に提出できます。

能力面では、個人の専門的な知識やスキルだけでなく、取引先と円滑にお仕事を進めるためのコミュニケーション能力や、売上管理など事務的作業をこなすスキルがなければ個人事業主として働き続けるのは難しいかもしれません。

経理や確定申告など代行を依頼できる業務もありますので、どうしても苦手で出来ないという方はコストも考えながらうまく取り入れてみましょう。

個人事業主として開業届を出すメリット・デメリット


税務署に開業届を出すと、晴れて個人事業主となります。
個人事業主を名乗れるようにはなったものの、出す前と比べてどんな変化があるのでしょうか。

事業収入を得ていくにあたっては必ず提出が必要な開業届ですが、出すことによって何が変わるかは事前に知っておきたいですよね。
後から「知らなかった!」と困らないように、こちらではメリット・デメリットをご説明いたします。

メリットはこんなにある


開業届を出して受けられる最大のメリットは、青色申告による恩恵です。
確定申告には青色申告と白色申告があります。

白色申告は簡易的な記帳でよい半面、控除できる額が青色申告に比べて低く設定されています。
青色申告は開業届と青色申告承認申請書を提出した個人事業主だけが行うことができ、最大65万円の「特別控除」が受けられます。

その他、赤字の繰り越しや、家族に対する人件費を経費にできるなど青色申告には複数のメリットがあります。
そして開業届は、金融機関で屋号付きの口座を作る際に控えの提出を求められることがあります。

スムーズに口座を開設できるよう準備しておきたいですね。
また、何もないよりは社会的信用度が高いと認識してもらえるでしょう。

特にまだ開業して日が浅く確定申告書も用意できない場合、融資や賃貸借契約時の審査などに有効となる可能性があります。

その他、退職金がない個人事業主のための「小規模企業共済」にも加入することができます。
掛け金の全額が所得控除の対象になりますので、節税メリットもありますね。

知っておきたいデメリット


事業開始のタイミングは、注意したいポイントです。
開業届を出すことによって発生するデメリットについてご紹介いたします。

まず、健康保険上の扶養家族である場合、その扶養の要件から外れてしまう恐れがあります。

政府管掌の「協会けんぽ」では、個人事業主であっても条件次第で扶養家族となることができますが、
協会けんぽの以外の健康保険組合ではそれぞれ独自の基準があり、個人事業主が扶養の対象であるかどうか確認する必要があります。

該当される方はご家族が加入されている組合に要件を問い合わせてみましょう。
また、雇用保険に加入していた人が受け取る失業手当についても注意が必要です。

失業手当は、働く意思のある方が次の仕事先を見つけるまで所定の日数を限度に貰えるお金なので、開業届を出すことにより失業状態ではないと見なされ手当を受給できなくなります。

ただし給付の手続きをしておけば、失業手当の満額受給までに再就職した際に貰える「再就職手当」は受け取ることができます。

フリーランス・個人事業主の確定申告


収入から経費を差し引いた所得が48万円(給与所得がある方の副業の場合は20万円)以上になる場合、全ての人が確定申告を行う必要があります。

この基準以下であっても、フリーランス・個人事業主として事業を継続していこうと考えている方はなるべく申告をしておきましょう。

どこかで確定申告書の控えを突然要求されることがないとも限りません。
遡って〇年分、というような指定を受けることも多いので、申告を済ませておけばもしもの時に慌てずに済みます。

また、青色申告の個人事業主が赤字を申告する場合、損失を最長3年に渡って繰り越せます。
もしくは前年の黒字と相殺して所得税の還付を受け取れる可能性もあります。

なお、青色申告には特別控除を受けられるという利点がありますが、通常最大55万円のところ、インターネットを通じて手続きを行う「e-tax」の利用で最大65万円となります。

これはお得ですね。

フリーランス・個人事業主の税金


個人事業主が納める基本的な税金としては、所得税・事業税・住民税・消費税の4種類があります。
このうち、所得税・事業税・住民税は確定申告書の額を基に計算されます。

消費税は、前々年度の課税対象売上が1000万円を超える場合のみ税務署に申告して支払い、または還付を受けます。
そのため、開業2年目までの個人事業主は気にする必要がありません。

フリーランス・個人事業主の保険


フリーランス・個人事業主の方が加入する健康保険は、基本的には国民健康保険です。
退職して個人事業主になるという方は、加入していた健康保険の任意継続の制度も確認してみましょう。

退職から2年間と期間が限定されていますが、特に扶養家族が多い方は、世帯全体の保険料が国民健康保険より安くなる場合が多いです。

加入していた健康保険協会支部(または組合等)・お住まいの地域の役所でそれぞれの保険料を比較してみることをおススメします。

扶養家族の要件に該当する場合は家族の扶養に入るという手もありますが、収入調整が難しい面もありますので、個人事業主としてどんどん稼いでいきたいという方は注意が必要です。

その他、「文芸・美術・著作活動に従事」と「関連する団体に所属」が条件にはなりますが、フリーランス・個人事業主の方が加入できる可能性のある健康保険として文芸美術国民健康保険組合もあります。

また、健康保険以外にも、フリーランス協会による「所得補償制度」という保険もありますので、興味のある方は是非チェックしてみてください。

フリーランス・個人事業主の年金


フリーランス・個人事業主の方が加入する年金は、国民年金です。

厚生年金が加算される会社員と違って基礎年金の部分のみになりますので、厚生年金保険料を収めた場合と比べて将来の受取額は少なくなります。

ご自身のライフプランを考えた上で、掛け金を上乗せして支払い受取額を増やす付加年金や国民年金基金、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)など、必要であれば年金を増やす計画を立てましょう。

自分の都合で途中では止められない点や、付加年金と国民年金基金はどちらか一方しか選べない点など、諸条件にはご注意ください。
収入が低く保険料の納付が困難な方には、国民年金保険料の減免や免除・支払猶予の制度があります。

減免・免除が認められると将来の受取額が少なくなりますが、10年以内であれば余裕ができたタイミングで追納し、減免・免除分をカバーすることも可能です。

認定には条件がありますので、お住まいの地域の役所かお近くの年金事務所でご相談ください。

フリーランス・個人事業主のための給付金等の申請事情


政府による持続化給付金の申請については2021年2月に受付終了となりましたが、新しく事業を始めた方のための「新規開業特例」を受けるには、正しい期限内に提出された開業届、またはそれに代わる公的機関が発行した書類等の添付が必要でした。

開業届なんて出していないよ~と焦った方も多かったのではないでしょうか。
今後も同様の給付金申請時にこのような条件が課される可能性がありますので、開業届はきちんと出しておきましょう。

現在では、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令に伴い収入が減少した方のための「月次支援金」が申請できます。
また、各自治体でも協力金・支援金の制度を設けているところがあります。

対象となる方は是非チェックしてみてください。

「フリーランス」と「個人事業主」は言葉の種類が違う


「フリーランス」と「個人事業主」という一見似てそうなこの2つの言葉ですが、実は種類が違うことをおわかりいただけたでしょうか。

一般的な会話の中では同義語として扱われることも多いですが、実際の違いを知って正しく使い分けたいですね。

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Rolmy編集部(ライター)
Rolmy編集部

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