退職したらやることの流れ
退職したらやることは「住民税」「失業保険」「国民年金」「健康保険」「所得税」の5つの手続きです。
それぞれ手続きの期限は異なり、期限の目安は以下の通りとなります。
- 住民税:退職前後
- 失業保険:退職後すぐ~1年以内
- 国民年金:退職後14日以内
- 健康保険:退職後14日以内または20日以内
- 所得税:退職翌年の3月中旬
期限や手続きできる窓口がそれぞれ異なるため「難しそう」という印象を持つ人が多いですが、退職したらやることは難しいのではなく「面倒くさい」が正解です。
1つ1つの手続きは所要時間も短く簡単なので、コツコツ手続きを完了させましょう。
退職前後にやるべきこと
不安な気持ちから、退職してからやることを気にする人は多いですが、退職前にやることにもしっかり目を向けておきましょう。
退職前から正しい知識をつけ実践しておくと、退職後も楽になります♡
貯金
退職後に備えて、在職中からできるだけ貯金をしておきましょう。
生活費はもちろん転職活動費や税金等の支払いも発生するため、退職後は何かとお金がかかります。
「失業保険があるから安心」と考えるかもしれませんが、失業保険は退職後すぐに給付されるわけではありません。
自己都合で退職した場合の失業保険は「手続きから2ヵ月後」に給付されるため、退職から最低でも2ヵ月間は無収入で生活を維持する必要があります。
お金のなさは心の余裕につながるため、落ち着いて転職活動をするためにもしっかり貯金しておきましょう。
返す必要がある物を返却する
健康保険証
退職日を迎えたら、すみやかに健康保険証を会社に返却しましょう。
有給休暇を取得する場合、最終出勤日と退職日が異なることもあると思いますが、健康保険証は最終出勤日ではなく退職日まで利用できます。
そのため、退職日を迎えたら会社まで持っていくか郵送で返却するのが一般的です。
また、万が一健康保険証を紛失してしまっている場合は、必ず在職しているうちに会社に相談してください。
在職中であれば再交付を依頼することができますが、退職後となると手続きが複雑化します。
会社から支給されているもの
会社のパソコンや携帯電話、社員証、制服など、在職中に支給され返却義務があるものは全て返します。
この他、会社の仕事を通じて受け取った名刺や自分で作成した資料のデータなども、返却するのが原則です。
ただし、名刺や制服などは会社によって「返却義務なし」としている場合もあるので、返す必要のある物・ない物を退職前の段階から正しく認識しておきましょう。
必要書類を受け取る
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していると証明するための書類です。
「入社時に会社に預けたかな?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、雇用保険の加入手続きは最初に入社した会社が行い、紛失しないようそのまま保管してくれています。
そのため、初めて退職する人は見たことなくて当然です。
雇用保険被保険者証は、転職後の会社でも提出を求められるため、返却された後は大切に保管しておきましょう。
退職から2週間程度で郵送されてくるのが一般的ですが、万が一届かない場合は最寄りのハローワークに行けば再発行してもらえます。
離職票
離職票は、退職したことを証明するための書類で、正式名称は「雇用保険被保険者離職票」です。
2枚つづりになっていて、退職から2週間程度で郵送されてきます。
失業保険を受給する際、ハローワークに提出を求められるため返却後はなくさないようにしてください。
退職の意思を伝えれば会社がハローワークに手続きを取り、離職票を発行してくれるのが一般的ですが、中には自ら「離職票が欲しい」と言わなければ発行してくれない会社もあります。
不安な場合は退職前の段階で離職票の発行を会社に依頼しておきましょう。
健康保険資格喪失証明書
健康保険資格喪失証明書は、退職後の医療保険二重加入を防ぐ目的で存在し、国民健康保険の加入脱退の際に必要となる書類です。
退職後、健康保険証を切り替える際に提出を求められるため、通常なら退職から2週間ほどで郵送されてくるでしょう。
しかしこちらも、事前に依頼しておかないと発行してもらえない場合があるので、退職前に会社に発行依頼しておくことをおすすめします。
それでも会社が発行してくれない場合は、年金事務所または市区町村役場に相談すれば即日発行が可能です。
年金手帳
年金手帳は、年金の被保険者であることを証明する書類です。
入社時、年金手帳ごと会社に預けている場合と、中に記載されている基礎年金番号のみ提出している場合とがあり、
年金手帳そのものを預けている場合は退職から2週間ほどで郵送返却されます。
会社から年金手帳が返却されない場合、または年金手帳を紛失してしまった場合は、自宅近くにある年金事務所で再発行が可能です。
源泉徴収票
源泉徴収票は、1年間に支払われた給料の総額と、収めた所得税の金額が記載された書類です。
源泉徴収票は会社に発行義務があるため、本来は発行依頼をしなくとも退職から1ヵ月~その年の12月末までには郵送されてきます。
源泉徴収票は退職の翌年に行う確定申告でも必要となるので、必ず受け取り保管しておきましょう。
もしも源泉徴収票が届かない場合は会社に催促の連絡を入れ、それでも発行されなければ近くの税務署に相談してください。
退職後すぐに転職先が決まっている場合は
中には、在職中に次の転職先を見つけ、退職後すぐに次の会社に入社するという人もいるでしょう。
その場合は、届いた書類を転職先の会社に提出すれば会社がすべて手続きを行ってくれるので、自分で手続きする必要はありません。
転職先の会社に提出する書類は「雇用保険被保険者証」「健康保険資格喪失証明書」「年金手帳」「源泉徴収票」「マイナンバーカード」などです。
転職先の会社から持ってきて欲しい書類を指定されるので、指示に従いましょう。
退職したらやること5選とその順番
退職後、次の会社に勤めるまで期間があく場合は、保険や税金の変更・加入手続きを自分でしなくてはいけません。
ここからは、退職したらやることを手続きするべき順番に沿ってご紹介します。
ただし、手続きの期日さえ守っていれば、順番が前後しても問題ありません。
必要書類が届くタイミングや就職活動のスケジュールに合わせて、効率よく手続きを済ませましょう。
退職したらやること1.住民税
退職したらやること1つ目は、住民税の手続きです。
しかし住民税は、直接窓口に行く必要はありません。
給料から天引きされる「特別徴収」から、年に4回納税者が自ら納める「普通徴収」に自動的に切り替わります。
住民税の金額は今年ではなく去年の所得に対し決定するため、退職前の会社の給料が高ければ高いほど税金も高額になるでしょう。
「住民税が高すぎて払えない!」なんてことがないように、退職前からしっかりお金をプールしておいてくださいね。
また、住民税は退職する月によって徴収方法が異なります。
退職月が1~5月の場合
1~5月の間に退職した場合、5月までの住民税が退職月の給料から一括で徴収されます。
場合によっては、退職月の給料が住民税でほぼゼロになってしまう人も!
ただし給料と退職金を足しても住民税の方が高くなってしまう場合は、人事担当者と相談して普通徴収に切り替えてもらうことも可能です。
退職時期が1~5月の人は、退職する前から住民税に意識を向け、必要があれば人事担当者に掛け合ってください。
退職月が6~12月の場合
何も手続きしなくても自動的に普通徴収に切り替わり、自宅に納税通知書が届きます。
金融機関やコンビニ、市役所窓口などで支払うことができるので、期日までに支払いを完了させましょう。
退職したらやること2.失業保険
退職したらやること2つ目は、失業保険給付の手続きです。
離職票が手元に届いたら、家の近くのハローワークに失業保険給付の手続きをしに行きましょう。
失業保険の手続きで必要な書類は「雇用保険被保険者証」「離職票」「身分証明書」「印鑑」「本人名義の通帳」「証明写真2枚(縦3cm×横2.5cm)」です。
必要書類を持ってハローワークで申請を終えたら、7日間の待機期間を過ごします。
会社都合退職の場合はその後すぐに、自己都合退職の場合は約2ヵ月の給付制限期間を経て失業保険が給付される仕組みです。
また、失業保険は退職後1年以内なら申請可能なので「今すぐは必要ない」という人は手続きを後回しにしても問題ありません。
ただし、1年以内という期間には受給期間も含まれているので、ギリギリになって申請すると受給期間が短くなってしまうことは頭に留めておきましょう。
退職後すぐに転職活動ができない場合
妊娠や出産、病気、介護などですぐに転職活動ができない場合もありますよね。
そのような場合の救済措置として、正当な理由で30日以上働けない場合は、ハローワークに申し出ることで受給資格を最大3年間延長させることが可能です。
もともと誰でも1年間は受給資格を持っているので、それと合わせると最大4年間の受給資格となりますよ!
失業保険の給付延長を希望する場合は「給期間延長申請書(ハローワークでもらえます)」「雇用保険被保険者証」「離職票」「身分証明書」「印鑑」「診断書や母子手帳など」を持ってハローワークに相談してください。
退職したらやること3.国民年金
退職したらやること3つ目は、国民年金の手続きです。
年金は「厚生年金」から「国民年金」に切り替える必要があります。
手続き期限は退職日の翌日から14日以内で、住民登録をしている役所の国民年金窓口で手続き可能です。
国民年金の手続きには「年金手帳」「離職票」「身分証明書」「印鑑」が必要となるので忘れず持っていきましょう。
退職したらやること4.健康保険
退職したらやること4つ目は、健康保険の手続きです。
健康保険の手続きには「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養」という3つの選択肢があり、自分にとって最適なものを選ぶ必要があります。
どの手続きを選ぶかによって期限や手続き方法も異なるため、それぞれの違いをしっかり把握しておきましょう。
任意継続する
任意継続とは、退職した会社の健康保険に引き続き加入することで、退職者の意思だけで最大2年間継続加入できる保険です。
加入を希望する場合は退職日の翌日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を家の近くの協会けんぽ支部に提出します。
任意継続被保険者資格取得申出書は、協会けんぽの公式サイトからダウンロードできますよ!
ただし、在職中のように健康保険料が会社と折半になるわけではありません。
保険料は全額自己負担となり、これまでよりも高額になるのが一般的。
高所得者や扶養家族が多い場合は、任意継続を選択することで得をするケースもありますが、単身女性の場合だと損をするケースが多く任意継続を選択する人は少数派です。
国民健康保険に切り替える
国民健康保険とは、市町村が運営する健康保険のことです。
国民健康保険は年収が高い人ほど保険料が高額になるほか、住んでいる地域によっても税率が異なります。
切り替えの手続きは退職日の翌日から14日以内に、近くの役所の国民健康保険窓口に行けば手続きできますよ!
手続きには「健康保険資格喪失証明書」「身分証明書」「マイナンバーカードもしくは通知カード」「印鑑」が必要です。
また、源泉徴収票など前年の所得がわかる書類を持っていけば、保険料の試算もしてもらえます。
家族の扶養に入る
家族の社会保険に入って扶養家族となる方法もあります。
扶養は家族と別居していても入れるので、親から離れて一人暮らしをしている人でもOKです。
扶養家族の社会保険料は発生しないため、失業中の出費を大きく抑えることができるのは助かりますよね。
扶養に入る際に必要となる書類は、その人が置かれている状況によって大きく異なるため、まずは家族が加入する健康保険組合に問い合わせてみてください。
ただし、失業保険を受給している間は家族の扶養には入れません。
失業保険を受給していることにより扶養に入れない場合は、国民健康保険または任意継続を選択しましょう。
退職したらやること5.所得税
退職したらやること5つ目は、所得税の手続きです。
所得税は退職した翌年に確定申告をして、税金の返還や追加徴収を行います。
在職中の「年末調整」の代わりに、自分で「確定申告」をすると考えるとイメージが掴みやすいはずです。
所得税を算出する際には「源泉徴収票」が必要となり、退職した翌年の2月中旬~3月中旬までに手続きします。
手続きは所轄の税務署のほか、自分でパソコンを使って書類を作り郵送することも可能です。
また「退職金」は、退職者が所得税を算出する際に見落としがちなポイントなので要注意。
退職金は、所得に含まれるため確定申告できちんと計上しなくてはいけません。
ただし全額対象になるわけではなく一部控除されるので、一般所得とは別の「退職所得」という欄で計算してくださいね。
退職後の年金や保険が払えない時の対処法
思わぬ出費の連続で年金や保険料が払えない時は、支払いを無視するのではなくきちんと申告しましょう。
ここからは、退職後の税金が払えない時の対処法をお伝えします。
住民税が払えない場合
普通徴収の住民税が払えない場合は「減額」「免除」「分納」措置を受けられることがあります。
自己都合では対象とならない場合もありますが、退職理由や時期によっては減額されることもあるので、まずは管轄の市役所や区役所に行き相談してみましょう。
相談しないまま払わないでいると延滞金が発生し、ペナルティが課されます。
最悪の場合、財産全てを差し押さえられることもあるため、払えない場合も必ず役所に相談してください。
国民年金が払えない場合
国民年金が払えない、または払うと生活が苦しくなる場合は「免除」「納付猶予」ができます。
免除には半額免除、4分の3免除など4通りの種類がありますが、役所の年金相談窓口で相談すれば、経済状況に合わせた免除種類を一緒に考えてもらえますよ!
また、納付猶予は一時的に国民年金の支払いをストップさせ、経済的に余裕ができれば後から追納する方法です。
申告すれば将来無年金となるリスクを下げられるので、たとえ払えなくてもきちんと申告し必要な手続きを取りましょう。
国民健康保険が払えない場合
国民健康保険が払えない場合は「減額」「免除」「分納」の対象となる場合があります。
まずは役所に相談し、減免の対象とならないかを確認してみましょう。
また、すでに延滞金がかさんでいる人も、相談すれば支払い期限を延長してもらえる可能性があります。
退職したらやることや、万が一税金等の支払いに困った際に取るべき対処法についてお話しました。
退職後、気持ちよく新たな一歩を踏み出せるよう、手続きはスムーズに済ませてくださいね!