2021.09.10

試用期間に退職したい◎伝え方を工夫して円満退社を目指そう

入社した会社が思っていたのと違う……試用期間中だけど退職したいと考える女性もいると思います。一方で試用期間で退職して問題はないのか不安にもなりますよね。今回は試用期間で退職するメリット・デメリット、退職の伝え方などを解説します。

試用期間とはなんだろう?


試用期間に退職できるかどうかやその方法を考える前に、そもそも試用期間とは何のか明確にしておきましょう。

試用期間はなんのためにある?


試用期間とは、企業などの「使用者」が人材を採用する際に、その人物が自分たちの会社や組織にあっているか、働く能力があるかどうかなどを、本採用前に確認する期間のことです。

正社員などの長期労働契約を結ぶと、企業は解雇するのが難しくなります。
そこで正社員などの期限がない労働契約を結ぶ前に、その人物の業務適正をみて雇用のミスマッチをなくすために試用期間を設けている会社が多いのです。

試用期間の法律的な意味


試用期間の限度については法律的な定めはありません。
ですが3か月~6か月の試用期間のところがほとんどです。

試用期間といっても、長期労働契約を前提に労働契約が締結している状態なので、企業側が正当な理由(経歴詐称や勤務態度の悪さ)を見せない限り解雇されることはありません。

企業が試用期間中に解雇したい場合は、通常の解雇と同じく30日前の予告、もしくは30日分の平均賃金の支払いが定められています。

※ただし雇用後14日以内であれば、企業は上記の責任を負わないという特例があります。

理不尽な解雇は違法ですが、試用期間終了後に正社員などの長期労働契約を結ばないということはありえます。

試用期間の労働契約は企業側に解除権が留保されている労働契約であり、試用期間後にスキル不足などを理由に本契約を見送るということが認められているからです。

つまり試用期間とは、むやみやたらと解雇されることはない(仮に理由なく解雇されたら違法)けれども、企業が業務適正がないと判断した場合、試用期間後に本契約が結ばれない可能性もある状態といえます。

試用期間中のお給料や福利厚生は?


試用期間はいわば企業が労働者の適正を見ている状態で、本採用ではありません。

ですが労働契約は結ばれていますから、企業は給料の支払いをし各種保険(健康保険や雇用保険、労働保険など)に加入させる義務があります。
※一部の短期雇用を除く

また試用期間中は本契約よりも給料が低く設定されていることがほとんどですが、それでも各都道府県の最低賃金は保証されています。

ただし法律に定められていない、各社が独自に設定している福利厚生については企業ごとに扱いがことなります。
企業が独自にもっている保養所の利用や、英会話スクールの補助費などは、本契約後に利用できるところがほとんどです。

試用期間であっても、企業は法律を遵守しなければならないということですね。

試用期間の延長はNG


試用期間は基本的な労働者の権利は守られているとはいえ、企業側に労働契約の解除権が留保されている状態ですから、企業側の立場の方が強いのはいうまでもありません。

そのため企業側都合による、一方的な試用期間の延長は法律上認められていません。
試用期間の延長が可能なのは、企業と労働者の双方が同意した場合のみです。

正社員が前提だったのに試用期間ばかり延長されていては安心して生活ができませんからね。

試用期間に退職できるの?


さて試用期間とは何かがわかったところで、ここからが本題です。

試用期間に退職したい……そう思った時に退職することは可能なのでしょうか?
何か問題は生じないのでしょうか?

結論からいうと、試用期間中の退職は可能です。
条件はありますが、試用期間中であっても「退職」という労働者の権利は守られなければなりません。

試用期間中の退職の条件について、少しみていきましょう。

2週間前の告知が必要


労働基準法では、退職を希望する日の2週間前に退職の意志を伝えることが義務付けられています。
ですが、これは最低の週数。

退職を決めたのであれば後任などを選任することも考えて、試用期間中であってもなるべく早く上司に退職の意志を伝え、円満に退社するようにしましょう。

円満退社は会社のためだけではなく、次の転職活動をスムーズにすすめるためにも重要です。

なぜなら企業の人事部は、面接に来た人の退職理由が本当であるか、また前職での業務態度などを確認するために、前職の人事部に連絡をとることがよくあるからです。

「やむを得ない理由」があれば即日退職もできる


法律上は2週間前までに退職の意志を伝えることが定められていますが、「やむを得ない理由」があれば即日退職も可能です。
「やむを得ない理由」としては、体調不良や怪我なので業務につくことができないなどが考えられます。

会社に迷惑をかけないためにも、次の転職活動のために円満退社を目指すためにも、できれば早めに退職の意志を伝えた方がいいです。
ですが、なにかしらの事情で心身に不調を感じているのであれば自分を守るのが先決です。

なるべく早く会社を辞め、自分を守るようにしてください。

試用期間に退職するデメリット


就職活動の末、苦労して入った会社……。
でも実際に入ってみたら思っていた就労環境ではないときもあると思います。

試用期間に退職した場合、なにかデメリットはあるのでしょうか?

次の転職や就職に不利に働く可能性


まず考えられるデメリットとしては、試用期間という短い期間で退職したことで、次の転職や就職に不利に働く可能性があります。

人を採用して育てるにはお金と時間がかかります。
企業にとっては簡単にやめられては困ってしまうんですね。

短い試用期間で退職した場合は企業が納得する退職理由がないと、「自分たちの会社もすぐ辞めてしまうのでは?」と敬遠されがちです。

職歴が「汚れている」と捉えられることも


退職は労働者の権利です。
試用期間であっても同じです。

ただし終身雇用が前提で「会社は長く勤めるもの」という意識がある比較的世代が上の人たちにとって、試用期間での退職や転職の多さはマイナスに捉えられがち。

「職歴が汚れている」という捉え方をされ、忍耐力がないというレッテルを貼られてしまう可能性もあります。

ちなみに試用期間が短かったからといって、履歴書にその経歴を書かないのはNGです。
雇用契約を結んだ以上はちゃんと履歴書に書きましょう。

あるいは面接で過去の経歴について聞かれたら、しっかり試用期間のことも答えてください。
企業に試用期間で退職したことを伝えずに就職した場合、経歴詐称とみなされる場合もあります。

また長期労働契約が前提の試用期間であれば、労使契約を結んだことで短期間でも雇用保険や社会保険に入っていたはずです。
保険に入っていれば職歴に残りますから、黙っていても会社にはいつかバレます。

試用期間に退職するメリット


試用期間に退職するデメリットはありますが、メリットももちろんあります。
試用期間で退職することで、どんなメリットが得られるのでしょうか?

短期なら職歴に残らない可能性がある


試用期間で退職するデメリットで「試用期間で退職しても職歴には残る」と書きました。
これは社会保険などに加入することで、どんな企業で働いていたかが職歴として企業は見ることができるからです。

一方で試用期間中に短期で退職する場合、雇用保険や社会保険に加入する前という時もあります。

この場合は職歴として残りません。
次に就職を希望する企業が試用期間で退職したと知る術は基本的にありません。

初日からなんだか職場の雰囲気がおかしい、応募条件と全く違う労働環境だった……。
そんな場合は職歴になる前にさっさと退職するのも手です。

試用期間での短期の退職は、決して次の転職活動で有利には働きません。
中途半端に勤めて職歴を残すより、早めに決断した方がいいでしょう。

時間が無駄にならない


会社や職場環境などに違和感を抱きながら仕事をしても、やる気がでませんしスキルなども身に付きません。

中途半端な状態のままで勤め続けるのは職歴に見合った能力も身につかず、時間を無駄にする可能性もあります。

試用期間中に何か違和感を感じたり、おかしいと感じることがあったのなら、中途半端に会社に居続けるより試用期間で退職した方がいいかもしれません。

試用期間に退職したい……退職の手順


ここまで試用期間とはなにか、試用期間で退職するメリットやデメリットを解説してきました。
再度書きますが、試用期間で退職する際の最大のリスクは「転職活動に影響を及ぼす可能性がある」ことです。

試用期間での退職は簡単にすべきではありませんが、実際に働いてみたら想像していたの違っており退職したいと思うこともあるでしょう。

試用期間で退職したい……そう考えたとき、どんな手順で退職をすすめていけばよいのでしょうか。

まずは上司に口頭で伝えよう


試用期間での退職を決めたのなら、まずはなるべく早く上司に口頭でその旨を伝えましょう。
上司が特に定まっていない状態であれば人事部に相談しましょう。

法律上は2週間前の通知で退職できることになっていますが、会社も後任を見つけたりとなるべく退職まで時間がほしいと思っている場合が多いです。

会社と相談しながら退職日を決めていきましょう。
そうすることで円満退社できる可能性が高まります。

試用期間中の短い期間での退職をなるべくネガティブなものにしないためにも、円満退社をめざしましょう。

退職の意志を上司や人事部に伝える場合、当然退職理由も聞かれるはずです。

そんなときは会社のことを悪く言うようなネガティブなものではなく、お互いにとって前向きな関係でいられるような内容・伝え方を心がけてください。

書面で退職届を出そう


上司や人事部と相談の上退職が決まったら、書面で退職届を出しましょう。
退職の理由については口頭で上司や人事部に伝えていると思いますが、書面での退職届に書く退職の理由は「私事 一身上の都合により~」でOKです。

「職場の雰囲気が合わなかった」や「病気により」などの細かい理由は書かないのが通例です。

退職届は、退職者本人が退職を希望しており会社が解雇したわけではないことを示す重要な書類ですから、余計なことを書くと受理してもらえないこともあります。

その他事務手続きも忘れない!


ここからは退職後の話になりますが、退職とともに社会保険の切り替えなどの手続きも忘れないようにしましょう。

国民健康保険への加入、年金の手続きなど、やることは色々あります。
しっかり調べて抜け漏れがないようにしたいものです。

理由別◎試用期間に退職したいときの伝え方


ここからは、実際に上司や人事部に退職を相談する際の理由別の伝え方について説明します。

円満退職ができるかどうかは、この伝え方にかかっていると言っても過言ではありません!
退職の理由がなんであれ、鉄則は「会社を責める言い方はしないこと」です。

試用期間に退職したいと伝えるときは、以下のように伝えると角がたちません。

求めていた仕事内容・労働環境と違う場合


退職の理由としてはこれが一番多いでしょう。

  • 暇すぎる
  • 忙しすぎる
  • 単純作業ばかり
  • ノルマがキツイ
  • スキルアップできる要素がない

こんな理由が本音の人は多いはず。
でもそれをこのまま伝えるのはNGです。

このまま伝えると、どうしても会社を責める言い方になってしまうからです。

例えばスキルアップ出来る要素がないために試用期間で退職したいと思った場合、以下のように伝えてみましょう。

「こちらで業務を行う中で〇〇という分野に関わるうちに、〇〇に非常に強い興味を覚えるようになりました。〇〇に特化して専門性を高めたいと考えており、退職を希望しております。」

このような伝え方なら、嘘はついていませんし会社に対してネガティブな印象を持っていることが隠せます。

また単純作業ばかりで試用期間で退職したいと希望した場合は、以下のように理由を言い換えるとネガティブになりません。

「試用期間中、業務を通じて経験を積んでまいりましたが、この経験を活かし自分の力を試してみたいと考えるようになりました。この経験を活かすために新しい環境に身をおこうと考えており、退職を希望しています。」

本音がどうであれ、退職の理由を伝える際は「会社を責めない、文句を言わない」ようにします。
前向きに聞こえるように伝え方を工夫し、会社側も気持ちよく退職を認めることができるようにもっていくのです。

体調不良


この理由は伝えるのが簡単です。
ただ素直に「体調がすぐれず業務を遂行するのが難しくなった」ことを伝えればOKです。

会社を責める理由になりようがないからです。
※ただし体調不良の原因が会社に起因するものである場合、労働災害となることもあります。
その場合は自己都合で退職を希望する手続きとは違ってくるので注意が必要です。

ちなみに体調不良を試用期間中の退職の理由にする場合、会社側から診断書の提出を求められることがあります。
ですが、診断書の提出は法律上は義務付けられていません。

会社から求められたからと言って、出す必要はありません。
ただし診断書があれば会社側も納得しやすいのは事実ですので、多少お金はかかりますが診断書をとって退職をすすめるとスムーズにすすむのも事実です。

社風・人間関係が原因の場合


これも退職の理由としては多いと思います。
そしてもっとも伝え方が難しい退職理由でもあります。

  • 人間関係がぎすぎすしてて居づらい
  • 残業が当たり前な社風が嫌い

などそのまま伝えたら、どうしても会社を非難する言い方になってしまいます。

例えば残業して一人前!なんていう間違った価値観がまかり通ってる職場であれば、以下のように伝えてみましょう。

「仕事と家庭の両立が難しいと感じています。このままでは、会社を休むなどしてご迷惑をおかけする可能性があるので、試用期間という短い期間ではありますが退職させていただきたいです。」

社風・人間関係が原因の場合、前向きに伝えるのはなかなか難しいものです。
そんなときは「会社のために」退職する方向に持っていくと、会社を非難せずに退職理由を述べることができます。

【まとめ】試用期間に退職したいなら手順を守ってしっかりと!


試用期間で退職したい……退職は労働者の権利ですから試用期間であっても退職できます。
ですが、その時の感情にまかせてすぐに退職するのは得策ではありません。

上記記事のデメリットであげたように、試用期間の退職という短期間の退職は次の転職活動などでも決してプラスに働くものではないからです。

試用期間に退職するメリット・デメリットをしっかり理解した上で言い方や伝え方を工夫し、次の就職で不利にならないように上手く賢く行動していきましょう。

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レイトン愛加(ライター)
レイトン愛加

英語・キャリア系の記事が得意◎ブラジル在住ライター

英語力0からアメリカ高校留学・オーストラリアTAFE留学を経て英検1級・TOEIC950に。ブラジル現地会社で英語とポルトガル語で経理関係の仕事をしています。ブラジル会計士資格取得済み。ブラック企業から転職エージェントを利用しコンサル企業に転職成功した経験からキャリア関係の知識も豊富。趣味は読書と遺跡巡りと美容研究。

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