フレックス制度とは?
フレックス制度とは決められた一定の労働時間をコアタイムとして定め、その範囲内で始業時間から終業時間まで、従業員本人が自分で自由に決めることができる働き方のことです。
従業員の自由な働き方を尊重した制度で、ワークライフ・バランスの推進としても進められている働き方です。
労働時間の調整により、仕事の効率や生産性が上がることも期待されていて、企業としてもプラスに働く面は実は多いのです。
フレックス制度の目的
フレックス制度は、従業員自らが自分の出勤時間を決めることができるなど、自分の働き方を自身の裁量で選択できるので、プライベートと仕事のバランスがとりやすくなります。
自分の都合に合わせて調整が可能なのでストレスも少なく、充実感を持って働くことができるという目的があります。
全ての従業員が気持ちよく満足して働くことができるためにも、企業として見直しているところは増えてきているんですよ。
日本のフレックス制度の普及率
平成30年に厚生労働省で行われた「就労条件総合調査の概況」のデータでは、フレックス制度の普及率は、
<日本の企業のフレックスタイム制の普及率>
・従業員1,000人以上の会社:24.4%
・従業員300人〜999人の会社:10.7%
・従業員100人〜299人の会社:7.6%
・従業員30人〜99人の会社:3.9%
と、とても低い割合で推移しています。
企業の全体で見ても、フレックス制度を導入している企業は全体の5.6%と、まだまだ低い水準となっています。
大企業になるほど普及率は高いと言われているもののそれでも20%強ほど。
昨今ではコロナウィルスの影響で在宅ワークなどが増えたことなどもあり、ますます取り入れることを検討している企業も増えてきている傾向にあります。
自由な働き方が尊重されつつあるのですね。
フレックス制度の特徴
「フレックス制度って縛りもいろいろあって難しそう…」。
そう思っている人にも端的に理解できる、フレックス制度の特徴をご紹介します。
出勤、退勤時間を自分で決められる
最大の特徴は、やはり従業員自らが自分の出社や退社の時間を決めることができるという点にあります。
しかし、『コアタイム』という決められた労働時間内は必ず労働を行う必要があるので、24時間いつでも働くことができるということではないので注意しましょう。
例えば、コアタイムが午前11時から午後4時までの間であると定められていたら、その時間は勤務をする必要があります。
始業時間や終業時間も労使協定で定められていることが多いので、事前にきちんと決まりを確認しましょう。
残業代もきちんと支払われる
フレックス制度で心配されがちなのが、残業代の支払いについてです。
フレックス制度でもきちんと残業代は支払われます。
実際にその月に自分が働いた時間が、総労働時間よりも長い場合にはその分の残業代が支払われますが、とある1日の勤務時間がオーバーしたタイミングですぐに支払われるのではなく、総労働時間内の時間を清算したタイミングで発生するので注意が必要です。
フレックス制度のメリット
フレックス制度にはメリットがたくさんあります。
従業員にとっても、企業にとっても嬉しいメリットにはどういったものがあるのでしょうか。
プライベートの時間をしっかり取ることができる
大きなメリットは何といっても、プライベートの時間をしっかり確保できる点にあります。「この日は子供の送り迎えがある」「今日は朝に役所に行く用事がある」「この曜日の夕方には社会人大学で勉強したい」という私用に合わせて、働く時間を調整することができます。
プライベートの時間を確保できた分、他の日の労働時間で補うことができれば、その逆に労働にしっかり時間をかけた分、他の日にプライベートの時間を確保できるということもあります。
週単位や月単位という一定期間内で時間を設定することができるので、仕事とプライベートのバランスが取りやすいことは最大のメリット。
プライベートを充実させて公私ともに質の高い時間を確保することで、仕事における気力にも体力にも良い影響を与えてくれます。
通勤ラッシュを避けることができる
朝の通勤ラッシュはそれだけで体力を消耗してしまうので、通勤に不快感を味わっている人も日々多くいます。
特に今の時期はコロナの影響などで、満員列車に揺られて通勤することに抵抗を感じている人も多いのでは。
フレックス制度にすることにより、通勤時間のピーク時を避けることも可能です。
朝早い時間に出ると、会社に人が少なくより集中して業務に勤しめます。
その逆に、朝が苦手な人は遅めの時間に出ることで、頭もスッキリ集中して働くことができることも。
通勤ラッシュを避けることもでき、さらには自分に合った働き方を実現できることもフレックス制度の特徴です。
企業のイメージアップにつながる
従業員の働きやすい環境を整えるメリットはもちろんありますが、従業員の為を思った職場環境であるということは企業のイメージアップにもつながります。
若者を中心に多くの人が、ワークライフ・バランスを重視した働き方を望んでいる傾向にあるので、フレックス制度を取り入れている企業は自然と注目されます。
新卒採用はもちろん、優秀な人材を獲得するキャリア採用にも影響を与えます。
フレックス制度のデメリット
メリットが多くあるフレックス制度ですが、デメリットも存在します。
そんなフレックス制度のデメリットをご紹介します。
社外・社内のコミュニケーションが取りづらい
フレックス制度による勤務時間帯や出勤時間のずれなどから、社内のコミュニケーションが取りづらくなるというデメリットがあります。
それぞれのスケジュールに則った勤務体制であるがゆえに、メンバーが社内に揃う時間が少なくなってしまうのです。
そのため、報連相の不足などの問題が生じる危険性も。
事前にスケジュールを綿密に共有する工夫や、細かい連絡を取り合えるツールの導入なども事前に検討する必要があります。
社内だけではなく、社外とのコミュニケーションが取りづらいという問題もあります。
相手の勤務時間内に連絡を取らないと繋がらないことも多々あるため、社内社外問わずに、連携が取れる工夫をおこないましょう。
勤務時間外に電話やメールが来る
自分で働く時間を決めることができますが、場合によってはクライアントや社内メンバーとの勤務時間が異なってくることも。
だからこそ、自分の勤務時間が始まる前や終了後にも仕事関係のメールや電話が来ることも考えられます。
営業職の場合、勤務予定時間外にクライアントとのアポイントが入ることもあるかもしれません。
取引先や外部メンバー、社内メンバーとのスケジュールが全て合うことはありませんので、フレックス制であってもある程度の柔軟性と許容応力は持っておいた方が、気持ち的にも余裕がもてます。
フレックス制度の注意点
魅力的な点が多くあるフレックス制度ですが、注意しておきたい点もあります。
フレックス制度の注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。
管理者が労働時間をきちんと把握する
フレックス制度は勤務時間を従業員自らに委ねるという制度ではありますが、きちんと会社の総務などの管理者が従業員の勤務時間を把握することは必須です。
従業員によっては、明らかに毎回サービス残業をおこなう勤務体系になってしまっている場合や、勤務時間が足りない状況になっている社員がいる可能性もあります。
管理ツールを導入したり、勤怠簿を目視化できるようにするなど工夫しましょう。
管理者だけが把握するのではなく、チームの上長にも部下の勤務時間が共有できるような仕組みにすることが最も望ましいです。
コアタイム内での遅刻・早退
フレキシブルタイムでの遅刻や早退は発生しませんが、コアタイム内での遅刻や早退は発生するので注意が必要です。
コアタイムは原則終業時間内なのですが、フレキシブルに勤務時間が設定できるがゆえに、コアタイム内での勤務時間の認識がルーズになっていることもあり得ます。
従業員自らがしっかりと勤務の時間について意識することが重要です。
しかし、コアタイム内で遅刻や早退があり勤務時間が短くなっていても、フレキシブルタイム内で補われていれば賃金カットなどの対象にはなりません。
コアタイム内での遅刻や早退に関しては、企業として別途ルール作りが必要になってきます。
フレックス制度の残業
フレックス制度が導入されることで、無制限に働かされるという認識を持つ人も多いのですが、きちんと法定労働時間を超えた場合には時間外労働となるので残業扱いになります。
ただし、1日に8時間以上労働したからと言って、その時間がすぐに労働時間になるということではなく、清算期間内でオーバーしていた分が時間外労働の対象となります。
1日多く働いていても、他の日で短く働いている場合は±0となることと同じ原理です。
導入時にはしっかりと従業員に残業についての仕組みをお伝えをしておく必要があります。
フレックス制度を取り入れている企業
フレックス制度を取り入れている企業はまだまだ少ないとされていますが、どのような企業が取り入れているのでしょうか。
個人で完結できる職種の導入率は好調
個人で完結できるような職種、例えば、エンジニアやプログラマー、デザイナーなどは導入率が高い傾向にあります。
個人の裁量で働くことができ、その方が業務効率も良いとされるような職種では多く導入されているのが実態です。
企業によっては、部門によって個人で完結できるという所もあるので、企業の制度としての一貫性を保つことが難しいということもあります。
チームワークを必要とする職種の導入率は不調
チームワークを必要とする職種、例えば、工場のラインや接客の職種などはフレックス制度の導入が難しいとされます。
業務を行うためにも一定の人工が必要となってくることからも、人員を確保する必要があるので、フレックス制度ではなくシフト制度で時間を区切る場合が多いです。
その他にも、クライアントに対応する時間を合わせる必要がある営業職や、自由に出勤時間が選べない医師や教師などもフレックス制度の導入は難しい職業です。
一部の大手企業の導入はある
一部の大手企業ではフレックス制度を導入しているところもあります。
企業としての体制も整っており、社内のイントラなども完全に整備されている企業では導入もスムーズに行える傾向に。
フレックス制度を導入している企業を一部ご紹介します。
NTTドコモ
スマホなどの通信サービスで知られる大手のNTTドコモも先進的にフレックス制度を取り入れています。
セミナーなどの学習時間の確保や、プライベートの充実を重視することで仕事の生産性の向上を高めることを目的にしています。
朝10時~15時がコアタイムとなっており、従業員は自身の勤務時間を柔軟に設定しています。
住友商事
住友商事は全社的に、有給休暇取得促進やプレミアムフライデーの導入、オフィス環境とワークスタイルの見直しなど、働き方改革について前向きに取り組んでいる企業のひとつです。
フレックス制度も導入されており、従業員が業務において最高のパフォーマンスを実現できるように進めています。
アサヒビール
飲料の大手企業アサヒビールもフレックス制度を導入しています。
ミッションを「全従業員が安全で健康に働ける環境をつくること」としていることから、フレックス制度を導入しました。
より柔軟な働き方ができるようにスーパーフレックス制度を採用しています。
フレックス制度導入起業か確かめる方法
就職活動や転職活動を考えている場合、企業がフレックス制度を導入しているのかどうか気になりますよね。
企業のフレックス制度の導入の実態を知るための方法をご紹介します。
企業説明会や面接で直接企業に確認する
フレックス制度を導入している場合、就業規則に載せる必要がありますが、制度の詳細情報については載せる義務がありません。
そのため、求人情報を見ても細かい内容については知ることができません。
詳細を知る場合は、企業の説明会や面接の場で直接企業に聞いてみることをおすすめします。
その際には、単刀直入に制度について聞いてしまうと、制度目的の入社と思われて印象が悪くなってしまう危険性も。
「社員の方は平均して何時に出勤・退勤をされていますか」「コアタイムはどれくらいですか」といったように、自分が働くイメージを持つために伺っているのだというスタンスで聞いてみましょう。
実際に働いている社員に聞いてみる
企業のフレックス制度の実態を知るためには、実際に働いている社員にお話を聞いてみることもおすすめです。
働いている社員がどのようにフレックス制度を運用しているのか、希望がどれくらい反映されるのか、制度についてどう感じているのかなども、詳しく聞けると良いですね。
働いている方の部署や職種によっても、フレックス制度に対する評価や感じ方も違うので、ひとつの意見だけを聞いて鵜呑みにしないように注意が必要です。
働いている企業の複数の部署の社員の意見が聞けるとベストですね。
自らが健康経営の理解を深める
企業のフレックス制度の導入を知るために、自身が健康経営について知ることも手段のひとつです。
「健康経営」とは、「労働者の健康問題を自社の課題だと捉える考え方」のこと。
実際に、健康経営を行っている企業は自社サイト内で取組の紹介なども公表しています。
健康経営に関する知識があれば、事前にその企業が、従業員のワークライフ・バランスのためにどんなことを行っているのかを知ることができます。
企業によっては、優良企業として認定されているところもあるので事前にチェックしてみましょう。
自分の時間を大切に働きたい場合はフレックス制度導入企業がおすすめ!
ワークライフ・バランスの重要性が注目され、働き方改革も活発に起こっている近年では、在宅ワークやフレックス制度の導入、週4日勤務など企業によってさまざまな取り組みが行われています。
まだまだ全体企業としてのフレックス制度の導入の割合は低い傾向にありますが、今後より導入が加速されることが期待できます。
今や、プライベートの充実や副業をおこなうことで、より企業としても生産性が高められるということが定着してきており、働き方の変化にも目が離せません。
これからの生活で、自分の時間も大切にうまくバランスを取って働きたいと思ってる人には、フレックス制度が導入されている企業がおすすめです。
仕事もプライベートも充実させることができれば、あなたにとってベストな生活が実現できるかもしれませんよ。