株式会社における役員の定義
会社についてのルールがまとめられた「会社法」で、役員について定義されています。
どのような役割があるのか、チェックしてみましょう。
2021.12.11
どの企業にもいる会社役員。しかし実際に会社役員の種類や定義などについて詳しく知っているという方は少ないのではないでしょうか。会社役員の意味やなり方、必要なスキルなどについて解説します。会社役員の報酬など、気になる待遇についても紹介します!
会社についてのルールがまとめられた「会社法」で、役員について定義されています。
どのような役割があるのか、チェックしてみましょう。
役員とは、取締役・会計参与・監査役を指します。
取締役は、業務に関する意思決定を行う役割を担います。
取締役の代表である「代表取締役」は、社長である場合がほとんど。
しかし、必ずしも代表取締役=社長というわけではありませんので注意しましょう。
会計参与はその名の通り、会計に参与する役目があります。
会計参与になるのは、税理士や公認会計士など、会計のスペシャリスト。
取締役と共に、財務諸表などの会計書類を作成する役割があります。
監査役には、取締役や会計参与に不正な動きがないかどうかチェックする役割があります。
「社会常識に照らして著しく不当でないかどうか」という視点からもチェック。
不正があれば、裁判所に訴えることができます。
これらは、会社設立の際に選出することが定められています。
会社法の中に出てくる「役員等」という言葉。
役員等という言葉は、先程の取締役・会計参与・監査役にくわえて、執行役・会計監査人が含まれています。
それでは、執行役・会計監査人とはどのような人たちなのでしょうか?
執行役とはその言葉の通り、業務の執行を行う人のこと。
株主総会などが決定した方針に従い、専門的に業務を執行する役割があります。
会計監査人は、公認会計士や監査法人が担当し、計算書類の監査を行います。
外部の専門家と関わりを持つことで、会社の会計を健全に行っていくという目的があります。
役員とは、会社の経営方針を立てるなど、組織を作っていく立場。
会社側の人間であり、社員を使用する「使用者」と呼ばれる存在です。
それに対し社員は、給与をもらって働く立場です。
「従業員」「労働者」ともいいます。
それでは、契約内容など具体的な違いを見ていきましょう!
役員は雇用する立場、従業員は雇用されている立場という違いがあります。
そのため、結んでいる雇用形態が異なるのです。
一般的な社員として働く時は、会社と雇用契約を結びますよね。
しかし役員が結ぶのは「任用契約」。
会社側の人間なので、雇用保険や労災保険は適用されません。
社員が会社からもらうのは「給与」です。
しかし役員がもらうのは「役員報酬」であり、給与ではありません。
社員の給与は、役職などに応じて決定されます。
残業手当や休日出勤手当といったお金が支払われることも。
弱い立場である社員は、労働基準法などの法律によって保護されるのですね。
これに対し、役員の報酬は株主総会で決定されます。
基本的には社員の給与よりも高く支払われます。
しかし会社の業績が悪くなるなどのトラブルがあれば、大幅に減ってしまうことも。
社員には始業時間と終業時間の決まりがあります。
これにより、残業や早退といった概念がありますよね。
対して、役員の労働時間には決まりがありません。
役員としてしっかりと成果が出せていれば、短い労働時間でもOK。
しかしトラブル発生時などは、同じ報酬で長時間働くことがあります。
社員として入社した会社で、役員になることも可能です。
もともと一般の社員であった人が役員になることを「内部昇格」と呼びます。
詳しく見ていきましょう!
内部昇格すると社員ではなくなるため、会社を退職することとなります。
退職金の受け取り、雇用保険の資格喪失など、退職にまつわる処理を行います。
しかし、社員として仕事をしつつ役員になることも。
「使用人兼務役員」と言い、現場で業務を行いつつも、役員としての扱いを受けることを指します。
この場合は、社員としての扱いも継続されるので、雇用保険はそのまま維持。
役員報酬のルールも通常とは異なります。
会社側の人間として、より責任のある立場である役員。
各部門のリーダーである部長・課長などよりもさらに上です。
役員として各リーダーを管理し育成するには、マネジメントスキルが欠かせません。
会社のトップクラスの人間として、人を巻き込みながら管理していきます。
部下たちとの関係を大切にし、リーダーシップを発揮しなくてはいけません。
役員のマネジメントスキルの中に含まれるものとして、判断力があります。
現場で起こる困難な事例に対しても、指導したりアドバイスしたりする能力が求められる役員。
下から報告される問題が毎回同じということはありません。
さまざまなパターンの問題に対して、会社や取引先はもちろん、たくさんの部下やその家族のことまで考え、判断していく必要があります。
さらに、適切な助言には知識が欠かせません。
部下である各リーダーに助言するためには、現場を深く理解していなくてはなりません。
例えば製造にかかわる会社なら、機械や工程、管理体制など、製造に関するあらゆる知識が必要となることもあります。
与えられた担当業務をこなしていくことの多い社員。
一方、役員に求められる経営スキルは、その幅広さが特徴です。
上記をはじめ、役員には多くのスキルが必要です。
特に大切なのは、会計に関する知識。
今期はどのくらいの資金を投入し、どのくらいの利益が出ているのかを常に把握します。
そのためには、賃借対照表・損益決算書などの決算書類を読めるスキルが必要です。
法律やコンプライアンスの視点も必須です。
労働基準法や個人情報保護法など、関係する法律は理解しておかなくてはいけません。
また環境問題や男女平等など、社会的な観点からも物事を考える必要があるでしょう。
しかし、必ずしも1人で全てのスキルを網羅しなくてはならないということではありません。
特に法務や会計は専門家に頼ることも多くあります。
役員になる方法として、転職するという選択肢もあります。
エグゼクティブクラス向けの転職サイトは、役員クラスの求人も見受けられます。
新規事業の立ち上げや経営改革などで、優秀な人材を求めている企業は多いものです。
はじめから役員として入社するのではなく「役員候補」としての求人もあります。
すぐに役員になれるとは限りませんが、大企業に入って一般社員から徐々に出世するより、早く役員になれる可能性があります。
求人サイトやエージェントでの転職の他に、引き抜きによる転職も考えられます。
今いる会社などで大きな実績を残し、ヘッドハンティングされて入社するパターンです。
また、自ら起業して代表取締役になれば、それも役員になったと言えますね。
役員としての経験がなくても、役員として転職することも可能です。
役員として求められることは、企業によってさまざま。
その会社が求めていることと、自分ができることが合致すれば、十分にチャンスはあります。
大企業に役員として転職することは簡単ではありませんが、中小企業やベンチャー企業であれば、比較的チャンスが多い傾向があります。
しかし会社としても、役員の任用はやはり慎重。
スキルや経験が申し分ないという人が、基本的に採用されます。
責任のあるポジションである役員。
「やっぱり合わなかった」ということがないよう、慎重に転職活動を進める必要があります。
役員としての転職を成功させるためには、会社との相性が大切です。
経営プランを立てて実現していく役員は、常に企業理念に沿って物事を考える必要があります。
他社から転職すると、なかなか馴染めないというケースも。
企業理念に共感できないまま大きな責任のあるポジションを務めるのは困難です。
その会社の価値観に納得できるかどうかが重要なポイントになるでしょう。
また、役員になった後に辞任・転職することは難しい場合もあります。
一般の社員よりも重要な業務を担当していたり、会社の機密情報を把握していたりすることも。
例として、会社に不利な時期に辞任した取締役には、損害賠償義務があると定められています。
さらに、役員の定員はあらかじめ決められています。
自分の辞任によって定員が下回る場合は、新しく役員が就任するまで、引き続き役員としての権利義務を負うことに。
辞任するタイミングや引き継ぎの内容は、しっかりと検討する必要があります。
重要なポジションだからこそ、トラブル時には大変な思いをすることも。
後悔しないよう、会社との相性を特に慎重に考えましょう。
役員の定義や種類、なり方などについて見てきました。
会計や法務、事業戦略など、非常に多くの知識を求められる役員。
ビジネスに対する感覚が優れていないと務まりません。
他の役員との関わりはもちろん、部長など各ポジションにおける責任者と関係性を構築する必要があります。
上手にコミュニケーションをとりつつ、業務を進める実行力も必須です。
さらに役員は、長時間労働や過密スケジュールになりがち。
ストレス耐性はもちろん、タイムマネジメント能力など、全てのビジネススキルにおいて高い水準が求められます。
「なんとなく格好いいから」「出世したいから」といった思いで役員を目指すと、大変なトラブルに巻き込まれることも…。
役員を目指すなら、相応のスキルや能力が必須。
興味があるという方は、今のうちからしっかり自己研鑽していきましょうね!