起業に必要なお金って?
起業とは、利益を目的として活動することをいい、その形態はフリーランスや自営業・会社設立などさまざまなパターンがあります。
どのような形態の起業であっても必要となるのは「資金」です。
「起業したいけど資金の不安が……」と一歩踏み出すのを躊躇されている方もいるのではないでしょうか。
起業するためには、何にいくら必要なのか、どうやって調達するのかを明確にし、具体的な資金計画を立てる必要があります。
開業資金の平均は989万円!?
日本政策金融公庫の2020年度新規開業実態調査によると、開業資金の平均は989万円という結果が報告されています。
内訳は、500万円未満での開業割合が43.7%と最も多く、次いで500万円~1,000万円未満が27.3%。
1,000万円以下での開業が半数を超えています。
また、平均開業資金の989万円という数字も、1991年調査開始以来最も少ない金額。
開業にかかる費用は減少傾向にあるといえるでしょう。
ちなみに、同調査によると開業者の女性割合は21.4%と、調査以来最も高い割合。
女性起業家は年々増加している傾向にあります。
出典:日本政策金融公庫|2020年度新規開業実態調査(外部リンク)
そもそも起業資金は何のために必要?
起業に必要な資金の使い道には次のようなものがあります。
・登記費用や事務所・設備などの「会社設立のための初期費用」
・家賃や光熱費・人件費・税金などの「運転資金」
・当面の生活費
起業資金は、仕事をスタートさせるために必要な最低限の「初期費用」と、仕事を続けていくための「運転資金」として必要となります。
また、忘れがちなのが「当面の生活費」。
起業したからといって、すぐに安定した収入を得られるとは限りません。
収入がなくても生活ができるように、最低でも3ヵ月分の生活費は確保しておくと安心です。
起業資金の目安はいくら?
「起業に1,000万円近くかかるのはとても無理」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
しかし、一口に起業と言っても、起業の方法や業種によって必要な資金は大きく異なります。
起業資金を抑えたい方は、できるだけ起業資金のかからない形態を選びましょう。
起業の方法には大きく分けて次の2つがあります。
1.個人事業主として起業
2.会社を設立
それぞれの起業方法によって、どれくらい資金が必要なのか見ていきましょう。
1.個人事業で独立開業
個人事業主とは、会社は設立せずに個人で仕事をしていくことをいいます。
特定の会社に属さず自分で事業を営むフリーランスをはじめ、農家やネイリストなど、業態に関わらず自分で事業を営む人のことです。
税務署に開業届を提出するだけで事業を始められるため、開業にかかわる必要はかかりません。
個人事業主になることで、青色申告が利用できるなど税制上の優遇も受けられるようになります。
個人事業主としての企業の場合には、業種によりますが大きな費用は掛からないでしょう。
例えば「自宅でイラストレーターとして開業する」場合であれば、自宅とイラストを描く道具さえあれば起業できます。
新たに名刺やソフトウェアなど設備や道具の購入、宣伝広告する場合はその分の費用が掛かりますが、基本的には当面の生活費さえ確保しておけば問題ないでしょう。
ただし、自宅ではなく事務所を借りたり、店舗を持ったり、スクールを開業したりする場合などは、賃料や敷金礼金が発生するのである程度のまとまった費用が必要です。
店舗を借りるとなると、保証金や家賃などで数百万が必要になり、飲食店であれば、さらに調理器具などの設備資金もかなり掛かってきます。
そこに改装費用もとなると1,000万円近く掛かってしまうでしょう。
また、店舗や設備といった初期費用以外にも、ランニングコストとして運転資金が必要です。
一般的に、店舗を持った場合の運転資金としては次のようなものがあります。
・家賃
・仕入れ費用
・水道光熱費
・人件費
上記のような費用に加え、当面の生活費をしっかり確保しておく必要があります。
2.会社を設立
法人や企業など会社を設立して起業する場合は、個人事業主で必要な費用に加え、法人設立のための費用が必要になります。
法人設立で必要な費用の目安は次のとおりです。
・登録免許税:15万円
・定款認証代:5.2万円
・印紙代:4万円
・会社印や個人印の作成・証明取得代:約1万円
・司法書士などの依頼料:5~10万円
法人設立のためには30万円ほど必要となるでしょう。
また、会社設立の場合、資本金が必要となります。
資本金は1円からでも設立は可能です。
しかし、資本金があまりに少ないと、会社の信用に響くことや銀行から融資が受けられないなどのデメリットもあります。
資本金は、100万円~300万円を目安に用意するとよいでしょう。
起業資金の4つの調達方法
必要な資金が分かったら、資金を調達していきます。
資金調達方法には、次の4つがあります。
・1.融資を頼む
・2.個人での借入をする
・3.出資を依頼する
・4.補助金や助成金を利用する
それぞれ見ていきましょう。
1.融資を頼む
融資とは、銀行や信用金庫などから必要な資金を借入することです。
例えば、起業家へ積極的に融資している日本政策金融公庫では、次のような融資があります。
【新創業融資制度】
・対象者:新事業者もしくは開業後税務申告を2期終えていない人、また、自己資金の要件にも該当する人
・融資限度額:3,000万円(うち運転資金1,500万円)
・返済期間:各種融資制度で定められた返済期間以内
・金利:2.41%~2.80%(基準金利)
起業での融資は創業融資と呼ばれ、通常の融資とは異なる審査項目があります。
自己資金や個人の経歴・事業計画書などが融資の重要なチェックポイント。
創業融資を検討する場合、まずはしっかりとした事業計画書を作成したうえで金融機関に相談するとよいでしょう。
また、銀行や信用金庫・公庫からの融資だけでなく、行政が信用保証を斡旋して民間金融機関の貸し付けに信用保証をつける「制度融資」というものもあります。
制度融資は、信用保証会社が信用保証を付けるため起業家が借入しやすいという特徴があるので、検討してみてもよいでしょう。
出典:「日本政策金融公庫|新創業融資制度」(外部リンク)
2.個人での借入をする
銀行などの融資を受けられない場合に検討するのが、個人での借入です。
個人での借入方法としては次のようなものがあります。
・親族や知人から借りる
・銀行などの個人ローン
親や友人から資金を借りる場合、金融機関のように審査がないので融通が利きやすいでしょう。
しかし、個人間での借入は返済などでトラブルに発展し、人間関係の悪化にまでつながる恐れもあります。
個人間でも借用書や契約書を用意し、後々のトラブルを防ぐようにしましょう。
銀行や消費者金融では、使用目的を問わないフリーローンがあります。
フリーローンなら事業計画や起業後の将来性に左右されずに個人の審査で借りられるので、比較的利用しやすい傾向です。
ただし、フリーローンは金利が高い傾向にあり、売上だけでは返済しきれないという事態に陥る可能性も高いもの。
起業資金としてはフリーローンや消費者金融の利用はあまりおすすめできません。
3.出資を依頼する
起業する会社に対して、投資家などから資金提供を受ける「出資」でも資金調達できます。
出資には次のようなものがあります。
・ベンチャーキャピタルからの投資
・個人投資家からの投資
・クラウドファンディングで資金を集める
出資では、自分のビジネスに投資家からお金を出してもらう方法が一般的です。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家といった個人投資家から、投資を受けるのが代表的でしょう。
ただし、出資の場合は株式を発行し、投資家に配当金を支払う必要があります。
株を渡す割合や配当金など税理士など専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。
また、近年はインターネットで資金を調達するクラウドファンディングという方法も増えています。
クラウドファンディングは不特定多数の人から資金を得られるので、一人当たりが少なくても人数を集まればまとまった資金を調達できるでしょう。
4.補助金や助成金を利用する
国や地方自治体でも創業に対して補助金や助成金を用意しているので、活用するのも一つの手段です。
代表的な補助金としては、国の「創業補助金」があります。
創業補助金では、条件を満たすことで最大200万円の補助金を受けることが可能。
補助金は返済が不要なため、資金調達としては大きなメリット。
一方で、審査が厳しい場合や、ある程度の自己資金が必要となるなどのデメリットもあるので、慎重に検討しましょう。